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主なあらすじ
ある初夏の事。都に美濃国本巣の郡(もとすのこおり)で霊泉が湧き出たと言う知らせが入り、雄略天皇は勅使を霊泉の出る養老の滝へ行くよう指示をしました。
勅使一行は滝の付近で樵夫の親子に出会ったので、この滝に養老と名付けたいわれを尋ねてみました。すると、この2人こそ霊泉を見付けた親子であり、親孝行の徳がむくわれてこの滝の霊泉を受けられた事、また、この水を飲むと心が爽やかになり疲れも取れて、若返ったので養老と名付けたと語りました。
続いて勅使を滝壷に案内した老人は、霊泉を誉め、他の霊泉の例を挙げつつ尚もこの滝の水を誉めるのでした。
全てを見聞きした勅使はこれに感動し、急いで都へ帰り天皇に報告しようとした時不思議にも天から光りが降り注ぎ、美しい音色が響き渡り、花がヒラヒラと散りだし辺りはこの世と思えない程の様子となったのです。
すると養老の山神が現れ、清らかな滝の水をたたえて神仏同体である事を述べて、吹き渡る風や、川を流れる水の音を伴奏に舞を舞います。そして、泰平の世をたたえ祝福して神の国へと戻って行くのでした。
▽主な場面
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▽登場人物
○前シテ 老人の樵夫 ○ワキ 勅使
○後シテ 山神 ○ワキツレ 勅使従者
○ツレ 若い樵夫
▽面
○前シテ 小牛尉
※小尉とも言われている。「小牛」作によることから、小牛尉という。 神の化身として登場する老人が用いる。 尉面の中でも最も格調が高い。
○後シテ 三日月(快士系)
この曲は世阿弥作のものであり、養老伝説が基になっている。
典型的な脇能である「高砂」など世阿弥のほかの作品とはやや違ったつくりになっています。中入り後、神が登場し、祝福の舞を舞う神能の形式はとっていますが、霊的な化身があらわれて昔の物語などを語る他曲と異なり、前シテとツレは、実際に泉をみつけた人間であり、彼らが滝水の霊験を授かるという現実の物語として舞台で演じられている。
山神(後シテ)の出現
霊泉を見つけた親子
▽見どころ