時間の経過とともにドラマが進行し、対話の多い作品である。幽玄さの代わりにワクワクしたり、見る者の涙を誘ったり・・・・と、これも能を見る面白さであり、大きな魅力のひとつと言える。
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▽登場人物 <シテ・ツレ> ○前シテ 曽我五郎時致、曽我十郎祐成
(❀一部では、祐成はツレとして扱われている場合もある。)
○ツレ 団三郎・鬼王
○後シテ 裕成・時致
○ワキ 新田四郎
○後ツレ 御所の五郎丸
≪面≫ ●前シテ ●後シテ 直面
※この能では、面をかけている登場人物は一人もいない。シテが幽霊ではなく、現実の男性の場合はいくつかの例外を除い て、直面である。これは、素顔も面のひとつという能の考え方によるものである。
<前場>
頼朝が主催した富士の裾野における巻狩に便乗して敵討ちをしようと、裕成(シテ)・時致(シテ)兄弟は曽我を旅立ちました。
狩場で二人は、死を覚悟の上で父の敵裕経を討ち、宿願を果たそうと決意しました。しかし、ひとつだけ心残りなことがあります。それは、母にこのことを伝えてこなかったことです。
自分たちが居なくなった場合の母の嘆きを思い、従者の団三郎(ツレ)・鬼王(ツレ)に形見の品を届けさせようとしました。しかし、二人は主人を置いて去ることなど承知出来ませんと言い、叶わねば互いに刺し違えて死ぬとまで言い出す始末でした。
それでも、兄弟は形見を持って母に届け慰めるのも忠誠であると説得し、形見として兄十郎の手紙、弟時致の肌の守りを持ち帰ることになりました。
<中入り>
アイ狂言が登場する。ひとりは、兄弟が工藤裕経の寝屋に忍び込み敵討ちを遂げた際、現場に居合わせ、命辛々逃げ出して来た吉備津宮の神主である。もうひとりは、後から追って来た狩場の男である。
この狂言のなかで、裕経が討たれたことが表現されている。神主は呼び止められて、夜討の様を語り、刀と帯だけを持って逃げ出して来たと言う。狩場の男は、大藤内の背中が斬られているとか、曽我兄弟が追って来るに違いない、などと言うので、大藤内も後を追って逃げて行く。
<後場>
後場に入り、すぐ「小書」の「十番斬り」となる。敵討ち後の壮絶な展開が描かれている。そして・・・・
兄弟は別れ離れに戦うはめになり、兄裕成は新田四郎に討たれたらしいと判り、時致は剛勇古屋五郎ツレを真二つに斬ってしまうが、女装して近寄った御所五郎丸ツレに捕らえられて、頼朝の前に引き立てられてしまいました。
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橋掛かりでは暗いので、薄衣の五郎丸を女と思い見過ごす。
物語の舞台は駿河の国の冨士の裾野である。
▽見どころ