能曲目解説

▽主な場面

❑『鵺』

▽あらすじ

熊野から京都をめざしていた旅の僧が、摂津国芦屋の里に着き、里人に宿泊先を求めますが、この所の掟で旅人に宿を貸すことを禁じられているとのことで、断られます。
里人は州崎の御堂に泊まることをすすめますが、夜な夜な光る物が上がるから心するようにと注意します。僧は紹介された川沿いの御堂に法力をもって泊まることにしました。

夜更け朽木のような、空舟(うつほぶね=丸木舟)のようなものが近づいて来ます。人影も定かでない不思議なものが現れます。
乗ったものをよく見ると、人の形ながら異形の姿です。里人の言う光る物の正体であろうと不審に思い、言葉を掛けます。
はじめ正体を明かさなかった舟人も、「人間ではないだろう、名は?」と問いかける僧に、自分は頼政の矢先にかかって命を落した怪物鵺の亡霊であると名乗り、退治された時の様子を語る。
そして、近衛天皇の御代に、天皇を病魔に陥らせたところ、源頼政に射抜かれ、退治された、という顛末を語り、僧に回向を頼んで夜の波間に消えていきました。

しばらくして、宿を断った里人が僧の様子を見にやってきます。僧に乞われるままに里人は改めて頼政の鵺退治の話を語り、退治されて淀川に流された鵺がしばらくこの地に滞留していたと僧に伝えます。

里人に頼政の鵺退治の話を聞いた僧が読経していると、経を唱和しつつ鵺がその恐ろしい正体を現し、供養を感謝し、帝につき祟ったが、かえって殺されたのは天罰に当たったのだと自分の行いを懺悔する。その後その時の功により頼政は名をあげ主上より御剣を授かったが、一方自分はうつぼ舟に押し込められ淀川に流され我が身は成仏できないと言い、僧に再び回向を頼み海の彼方へと消え失せる。
以上
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~《宝生流》~

▽登場人物 


前シテ 舟人(鵺の化身)       後シテ 鵺の亡霊

○ワキ   旅僧

○アイ 里人

▽面  ❒前シテ 怪士(あやかし)   ❒後シテ 小飛出(ことびで)

▽分類 五番目物(切能物)
※魂の救済を求める鵺が情緒的に描かれ、怪物ながら人格を与えられた二番物、修羅物に近い作品です

▽形式  複式夢幻能
鬼畜物の能は、現在能が通例ですが、この能は複式夢幻能です。

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鑑賞ポイント解説
▽見どころ