▽あらすじ
平家討伐に大功績をあげながら、義経は壇ノ浦の合戦が終わると兄の頼朝から追われる身となり、やむなく弁慶以下十一人の家臣とともに山伏姿に身を変え、恩人・藤原秀衡が治める奥州を目指すこととなる。その話を聞きつけた頼朝は、新しい関所をもうけ偽山伏の一行を捕縛するよう命令を下します。富樫某が守る加賀国安宅にも義経追討の命令は伝わっていた。
安宅まで来たところで、義経一行は関所の存在を知る。偵察に行った強力の話では、その警戒は厳し人もの山伏が斬り殺されているとのこと。そこで弁慶は、強行突破を唱える家臣たちをなだめ、一計を案じる。東大寺建立のために北陸路に寄付を募る勧進聖ということで、義経はその強力に仕立てて、関守の目をくらまそうという計画であった。
関所に着くと、山伏は全員を殺すという関守の富樫に、弁慶は許しを得て”最後の勤行”をはじめる。その中身は、山伏を殺せば必ず熊野権現の天罰が下るであろうという、関守たちへの恫喝であった。その内容の凄まじさに一瞬、タジタジになる富樫だったが、敵もさる者、勧進聖であることを逆手に取り、ならば勧進帳を見せて欲しいと切り返す。
もとより偽の山伏である弁慶たちが、勧進帳など持ち合わせているはずもない。だが弁慶は少しも慌てず、持ちあせた巻物を勧進帳と偽り、関守たちに向かって声高に朗読してみせるのだった。そして”本物”の勧進帳であることを証明した義経一行は、ようやく関所を通過・・・・・。と思った矢先、今度は肝心の義経が見とがめられ、追求を受けることとなる。ついにここまでかと、色めき立つ家臣たち。それを抑え、弁慶は不思議な行動に出る。
「モタモタしているから目に付くのだ」と主君である義経を、金剛杖で打ち据えはじめた。”義経でない”ことを印象づけるための窮余の一策だが、それでも通さぬと言い張る富樫。
そこで弁慶たちもついに反撃に転じる。「ここまで強力に執拗にからむお前達は、定めし盗人に違いない」・・・・・・。その勢いのすさまじさに気圧され、さすがの富樫もやっと通行を認めるのだった。弁慶の機転と蛮勇で、何とか危機を脱した義経一行。
一息ついたところで弁慶は、義経に対する自分の行為を恥じるが、義経は「八幡神のご託宣だったのだ」と弁慶を慰め、これまでのわが身の不運を思い返す。と、そこへ先刻の富樫たちが非礼を詫びに、酒を持ってやってくるではないか。敵に決して悟られぬよう、一同に対して注意をうながす弁慶。
やがて酒宴が始まると、弁慶は富樫たちに力強い舞を舞って見せる。そして富樫たちに礼を告げると、一行とともに奥州へと足早に旅立つのだった。
勧進帳
貝立貝付
延年の舞
▽登場人物
●シテ:武蔵坊弁慶 ○ツレ(立衆) 山伏11人
○ワキ :富樫某
○子方 源義経
○アイ :富樫の家臣
○オモアイ 強力(山伏,修験者に従い,力役 (りょくえき) をつとめる従者の呼称)
~観世流~
▽形式 単式現在能
▽分類 四番目
▽主な場面
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▽見どころ
▽面 ❒シテ ❒ツレ・・・・ すべて直面