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▽登場人物
❁前シテ:尉→汐汲みの老人(融大臣の化身) ❃ワキ 旅僧 ❁アイ 六条辺りに住む者
❁後シテ:河原左大臣、源融
▽面 ○前シテ 三光尉 ●後シテ 中将
▽曲柄 五番目物、切能物、早舞物
▽形式 複式夢幻能
▽主なあらすじ
秋の名月の日。都に上った東国の僧が、六条河原院まで来たところ、田子(汐汲道具)を担いだ老人に出会います。海辺でもないのにと尋不審に思いたずねると、今は荒れ果てているが、昔は左大臣源融が陸奥千賀の塩釜の浦を模して造園し海水を運ばせ塩焼をして風流を楽しんだと語ります。
月が出てあたりを照らし、趣深い秋の夕景色がふたりの眼前に広がります。
庭の景色を眺めつつ、僧と老人がなおも言葉を交わします。そのうち・・・・荒れ果ててしまった河原院を思い僧は独り言のように嘆きます。
老人の嘆きをさほど意にとめず僧は都の山々の名所を教えてほしいと頼みます。そして京の山々の名所を教えると、月を見て汐を汲む頃合いだと言い消え失せます。
六条辺りに住む者にそれは源融の霊だろうと教えられ、旅僧は弔いをします。そして眠りにつきます。
すると貴人姿の融大臣が現れ、月光に照らされながら舞いを舞う。融は、時を忘れたかのようにこの月夜に興じていましたが、夜明けとともに、名残惜しい面影を残して、再び月の都へ戻っていく。 忘れがたい面影を残して。
▽主な場面
☆風流大臣の霊は、月光の精と見まごう姿で現れ、かつての風雅を
回想し、闊達に舞う。
☆月下の廃墟に汐を組み、豪奢な昔の風流を偲ぶ前シテの老翁。
融の大臣の化身である。