能面の特徴について
小面 | 女面のなかでも成立が一番早く、華やかな存在である。「小」は「小さい」という意味ではなく、英語PRETTYにちかく『可愛い』という意味です。 ぽっちゃりと愛らしく、目と鼻と口が顔の中央に集まり、幼い初々しさ、可憐ななかにも雅な明るさがある。金春流と喜多流の二流がシテ面に、そのほかではツレ面として使用している。毛描きは、顔の中央から左右に、二本または三本の毛筋が交わることなく平行に描かれているのが特徴である。 |
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孫次郎 | 室町末期の金剛座の太夫で右京久次(後に孫次郎に改名)が、うら若いまま夭折した妻の面影を映したと言われる面である。小面に比べ、目の位置が高く、頬のあたりがほっそりとして、そこはかとなく色気が漂う、成熟した女性の顔である。やわらかく華やかだが、どことなく淋しそうで、品がいい。毛描きは、中央から二本、こめかみのあたりで絡むように二本加わって耳前では四本になる。 |
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増 | 増阿弥という人の作。憂いを含み、小面、孫次郎より少し年かさ。小面に比べると目や鼻や口などが、全体的に下のほうへ下がった感じがする。額も広く長く、顎は短い。鼻筋が鋭く通って、頬の肉付きが引き締まり、いかにも端正な面ざしで、清楚な気品がある。 わずかに開けた唇、ほのかに漂うなまめかしさが、時として凄みと、冷ややかな美しさを感じさせる。毛描きは、中央から高眉にかけて太い毛二本、次に細い毛四本、次に毛内側に太い毛一本、その前に細い毛二本が流れ、乱れはない。 |
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若女 | 観世流で江戸初期に作られた。面打の名人、河内家重の作。小面の可憐さと増の品位と理知の中間をねらった女面と言われる。したがって、増より若干つややかな趣があり、均整がよくとれて 引き締まったところが、端麗という印象を与える。 毛描きは、増とまったく同じで、中央から高眉にかけて太い毛二本、次に細い毛四本、次に毛内側に太い毛一本、その前に細い毛二本が流れ、乱れはない。 |
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深井 曲見 |
中年の女性を表す面である。若い女面より額と顎がやや出て、中央がくぼまった感じで、唇の両端が下がり気味、頬の肉も落ちている。憂いをたたえ、年輪と人生経験の刻まれた表情である。概して、観世・宝生では深井、金春・金剛・喜多で曲見を用いる。毛描きは、三段に分かれ、初めに細い毛筋が三本、次に同じく三本または四本、そして次はまた三本になってそのまま下に流れている。深井は中央分け目からすぐに毛筋が描かれているのに、曲見は分け目からはずれて描かれているのが、見分け方になる。 | 毛描き画像 |
□その他面の特徴
翁 | 白色尉と呼ばれ、「切顎」(きりあご)と言って顎が口の腺で切られ紐で結ばれている。 ボウ々の眉が特色。天下泰平、国土安穏の祝福の祈祷を舞う、健康な老人の笑みをたたえている。 |
大獅子 | 恐ろしい中にもどこか慈愛が漂っていて、親獅子の貫禄を示す悠然たる百獣の王格を表現。 眉も眼も小獅子の様に上らず、丸みをあびて目尻が下っている。 |
十六 | 一の谷の合戦で十六才の若さで戦場の花と散った経正の可憐な武将を強調するに ふさわしい面。 |
邯鄲男 | 中国の話で邯鄲の夢枕(人生の栄枯盛衰のはかないたとえ)から付けられた名前。 中国の青年盧生の、人生の意義を模索する、憂愁の青年の顔だち.[邯鄲は古代中国 趙の都] |
俊 寛 | 法勝寺執行俊寛僧都 …… 落ち込んだ眼をなた豆状に下げ 痩せこけた頬 下歯のない口 等に 南海の孤島に取残された流刑僧の悲痛感が漂っている。 |
般 若 | 般若坊の創作による処から付けられた名前。(般若とは仏教用語で智恵を意味する。) 女性の憤怒、怨霊、嫉妬、怨嵯、復讐それらの感情の極限をみごと一つに集約されている。 |
中将 | 目は大きめで眉根の襞にいささか苦しみをたたえている。 五位の中将在原の業平を相定し面。 平家の公達などの貴公子の役柄等に用いる |
一角仙人 | インドの仙人で鹿の胎内から生まれたと言う伝説から角が生えている。龍神を岩屋に封じ込めてしまう神通力の持ち主。 |
□女面の特徴