江口より
【舟】

「船」は、その外郭だけに簡素化された骨格を細く割った竹で作り、それに白い布を巻き付けてあるだけです。“底”はありません。

基本形は、『竹生島』や『船弁慶』の船です。

「船弁慶」に使うのが何も付いていない物で、篝火を付けて使うと「通盛」艫綱(ともづな)を附けると「俊寛」用になります。

さらに屋根を載せて屋形船にすると
「住吉詣」「江口」に使われます。
能・・・・シテと、ワキ、ツレ、囃子、地謡がいるだけでありながら、情景は地謡によってより鮮明になり、「感情」や「表情」は顔の角度・手の動き・足の運び・動作のスピード等により私達の心に伝えられます。私達の頭のなかでいかようにもアレンジメントが可能であり、狭い舞台も無限の空間へと変わります。能は一見非写実的に思われがちですが、、実に写実的な演劇と言えるでしよう。

限られた舞台空間ということもありますが、本質的に大道具的な“舞台装置”を必要としないのでしょう。
山や家、船や立ち木など物語を進めるにあたって、どうしても必要と思われるものは、やむを得ず簡単なセットを使うことがあります、これが「作り物」です。
製作は昔は「作り物方」という専門職がいましたが、今はシテ方の担当です。

能の作り物