※九州の「宇佐八幡」は、武士が頼みとする武道を司る神様、“八幡大菩薩”の元締め神社で、京都の「石清水〔いわしみず〕八幡宮」や、鎌倉の「鶴ケ岡八幡宮」も、ここの分社です。
時代劇などでも、剣術の道場などに「南無八幡大菩薩」の掛け軸が。
鳥も鳴け鐘も鳴れ。独り寝の方がどんなに気楽なことか。
妻の夢の中に清経の亡霊は傾く平家の運命と入水の有様を語る。

『清経』

愛してもなお越えられぬ男と女の間

▽登場人物  <シテ>平清経  

        《面》 “中将”(今若)

《主なあらすじ》

清経が精神的に追い詰められていく様子が、世の無常と戦乱の恐怖となって語られる。月澄む夜に海底へと沈んでいかねばならなかった清経の心理は、現代人にも共感できるものだろう。
京の都の平清経邸に、家臣の淡津三郎〔あわづのさぶろう〕が、九州の柳ヶ浦(大分県)で入水自殺した、清経の形見の鬢の髪〔びんノかみ〕を妻に届けるためにやって来る。
妻は、夫の自殺に納得がゆかず、その形見を受け取ろうとはしない。その夜、清経の霊が妻の夢に現れて、宇佐八幡の神にも見捨てられ、絶望のあまり舟から海へ身を投げたいきさつや、阿修羅地獄の有り様を語りつつ、最後は念仏によって成仏できたと告げて、姿を消します。

《主な場面》

愛する妻に自分の心情を語ろうと夢枕に立つ男のロマン。しかし、一人で死していった男と、最後まで二人で生きることを願った女との間には、意識のすれ違いがある。死んでももなお、妻との心の距離を感じなければならない清経のせつなさ・・・・
▽見どころ

能曲目解説

《雑感》