能の題材とテキスト

主な本説 能の曲目
古事記・日本書記 淡路・絵馬・大蛇・草薙・龍田・玉井・難波・三輪
風土記 岩船・賀茂・羽衣
万葉集 船橋・三山・求塚
古今集 女郎花・志賀・草子洗・高砂・難波・松虫
後撰集 檜垣
拾遺集 芦刈・黒塚
山家集 西行桜
伊勢物語 井筒・右近・雲林院・小塩・杜若・隅田川
大和物語 芦刈・采女・姨捨・求塚
源氏物語 葵上・浮船・落葉・須磨源氏・住吉詣・玉葛・野宮・半蔀・夕顔
今昔物語 一角仙人・絃上・昭君・是界・蝉丸・道成寺
宇治拾遺物語 国栖
古今著聞集・十訓抄 雨月・錦木・野森・三輪
平家物語 敦盛・碇潜・生田敦盛・箙・大原御幸・影清・兼平・木曾・清経・
小督・実盛俊寛・忠度・経政・藤戸・船弁慶・通盛・盛久・八島・頼政
太平記 嵐山・一角仙人・邯鄲・項羽・枕慈童
義経記 烏帽子折・熊坂・鞍馬天狗・橋弁慶・二人静・船弁慶・八島
曽我物語 元服蘇我・小袖蘇我・夜討蘇我

能の脚本は、ほとんどがオリジナルな創作ではない。
歴史上の事件と人物や、神話、伝説、物語、軍記、説話などが題材となっている。
そういう典拠のことを世阿弥は「本説」と呼び、本説が確かであることを名作の条件にあげている。

つまり、観客が「ああ、あの話か」とわかるような、有名な題材、典拠を用いることでイメージも豊かにふくらんでくる。

世阿弥はまた、名所旧跡を曲名とするような能ならば、その土地に取材した詩歌のよく知られた文句を、一曲のクライマックスに取り込めともいう。

漢詩の一句、一首の和歌さえも本説なのである。