能・・・・シテと、ワキ、ツレ、囃子、地謡がいるだけでありながら、情景は地謡によってより鮮明になり、「感情」や「表情」は顔の角度・手の動き・足の運び・動作のスピード等により私達の心に伝えられます。私達の頭のなかでいかようにもアレンジメントが可能であり、狭い舞台も無限の空間へと変わります。能は一見非写実的に思われがちですが、、実に写実的な演劇と言えるでしよう。

限られた舞台空間ということもありますが、本質的に大道具的な“舞台装置”を必要としないのでしょう。
山や家、船や立ち木など物語を進めるにあたって、どうしても必要と思われるものは、やむを得ず簡単なセットを使うことがあります、これが「作り物」です。
製作は昔は「作り物方」という専門職がいましたが、今はシテ方の担当です。
道成寺より
代表的な曲目として『道成寺』があります。

他の作り物と同じように能楽師自身が作ります。
鐘が大きいのは、シテが鐘の中で衣裳を変えたり面も変えたりして、後シテの装束に着替えるためです。
本来は人が入るものではない「鐘」ですが、この曲ではシテがその内に入り、一人で装束を変えるものですから、作り物の中でも最も大がかりなものとなっています。

竹を骨組に鐘の形が作られ、外側を紺地の緞子幕でおおっています。縁には重さをつける為、鉛が入れられ、その重さ4〜50貫といいますから約150キログラム(15キロが4貫)ということになります。また、鐘の内側には金属の鏡が装着され、後シテの面や道具なども入れておけるようになっているそうです。
【鐘(かね)】
吊り上げた鐘を柱で固定する金具
天井より吊るすための金具

能の作り物